2025.12.21
[観光情報]
山梨・甲府の宝石とジュエリー|その歴史と未来へつなぐ輝きの秘密

山梨・甲府が、なぜ「宝石のまち」と呼ばれるのか、その歴史をたどってみませんか。かつて、水晶の産地だったことから始まった山梨の宝石とジュエリーの長い歴史を紐解き、世界に誇る研磨技術や熟練の職人技がどのように受け継がれてきたのかを解説します。甲府の街で、その歴史に触れられる場所や、未来へ続く宝石とジュエリーの魅力をご紹介します。過去から未来へと続く「宝石のまち」の魅力を、ぜひ感じ取ってみてください。
山梨・甲府が誇る宝石とジュエリーの歴史
山梨・甲府が「宝石のまち」として全国に知られるようになったのは、かつて、この地で水晶が採れた歴史と深く関わっています。山梨・甲府の地で、どのようにして宝石とジュエリーの文化が花開いたのか、その歴史をたどってみましょう。
水晶の産地から始まった山梨・甲府の宝飾文化
山梨・甲府の宝飾文化は、縄文時代にまでさかのぼるといわれています。縄文人が水晶を矢じりに用いたことが、県内における水晶加工の始まりとされています。御岳昇仙峡奥地の金峰山一帯では、かつて透明で良質な水晶が豊富に採掘され、その美しさは古くから人々を惹きつけてきました。
江戸時代には、京都の玉造り職人・玉屋弥助が甲州に通い、昇仙峡の金櫻神社の神職に水晶研磨の技術を伝えます。この技術はやがて民間へと広まり、山梨・甲府の宝石産業の礎となりました。玉屋弥助は「山梨の水晶加工の始祖」として、今も語り継がれています。
研磨技術の発展と貴金属加工への展開
水晶加工によって磨かれた高度な研磨技術は、時代とともに進化し、眼鏡レンズや印材など実用品の加工にも活かされてきました。江戸時代、領主や幕府に限定されていた鉱山採掘ですが、明治時代になると一般にも解禁され、甲府での甲州水晶採掘が活発化。受け継がれてきた職人技と水晶彫刻の技術、さらに研磨機の開発など技術革新により、水晶産業は大きく発展しました。
やがて甲州産水晶は減少しましたが、大正時代にブラジル産水晶の輸入が始まり、産業は継続。水晶加工で培われた石を見極める目と精緻な研磨技術は、ダイヤモンドや色石にも応用され、鋳造や彫金技術の発展とともに、山梨は総合的なジュエリー産地へと成長していきました。
山梨・甲府で宝石の歴史にふれる旅
ここでは、山梨・甲府で宝石の歴史や文化を体感できるスポットをご案内します。宝石やジュエリーを実際に手に取って楽しめるショップをはじめ、手作り体験ができる施設、研磨技術や職人の技を今に伝える場所、宝石の魅力を学べる施設などを巡りながら、宝石とジュエリーの世界にふれる旅をお楽しみください。
小江戸甲府花小路

甲府駅南口からほど近い場所にある「小江戸甲府花小路」は、小江戸と呼ばれたころの城下町を再現したエリアです。石畳の小道には、かつての風情を思わせる建物が立ち並び、タイムスリップしたような気分を味わえます。その一角には、宝石専門チャネルである「ジュエリー☆GSTV」のショールームもあり、商品を実際に手に取ってご覧いただけます!
GSTV甲府花小路ショールーム

甲府市の鳥「カワセミ」をヒスイで表現した贅沢な一品をはじめ、気品と高級感あふれる優雅なデザインコレクションは必見です。店内には多彩な宝石を使ったジュエリーが並び、散策の途中に気軽に立ち寄るのもおすすめ。天然宝石が当たる「天然宝石ガチャ」も人気で、山梨旅行の記念にもぴったりです。ジュエリー修理の相談はもちろん、リフォームやオーダーにも対応しており、手持ちのジュエリーを無料で丁寧にクリーニングしてもらえるサービスも魅力です。


写真出典:小江戸甲府花小路
WEBサイト:GSTV甲府花小路ショールーム
甲州夢小路

甲府駅北口からすぐの「甲州夢小路」には、石畳の小路に甲府の歴史を感じさせる蔵造りの建物が並びます。小路を進んだ先には、山梨・甲府の宝飾産業の元となった水晶をはじめ、さまざまな天然石アクセサリーなどを扱う「玉屋」があります。「山梨の水晶加工の始祖」玉屋弥助にちなんだ店名で、水晶の歴史を感じることができます!
玉屋

「宝石のまち 甲府」にある玉屋では、水晶をはじめとした天然石アクセサリーを豊富に取り揃えています。生年月日から自分に合う石を調べられる無料サービスもあり、石選びに迷う方にもおすすめです。ブレスレットやネックレスのほか、とんぼ玉やねこ玉などのオリジナルアクセサリー、ガラスペンやサンキャッチャーなどの雑貨も充実。さらに、世界各国から集めた原石や水晶クラスター、アメジストなども並び、旅の記念やお子様にも人気です。


写真出典:甲州夢小路
WEBサイト:玉屋 甲州夢小路
小さな蔵の美術館

「玉屋」に併設の「小さな蔵の美術館」、アンティークジュエリーコレクション室には、アンティークジュエリーの名品を展示しています。ヨーロッパの貴婦人たちを彩ってきた、美しく気品あふれるジュエリーの世界を、ゆったりとお楽しみいただけます。また、花嫁の幸せを願うティアラや、亡き人への想いを込めたリングなど、さまざまな愛のかたちを18〜19世紀のジュエリーを通して紹介しています。時代背景や思想、服飾文化が色濃く映し出されたアンティークジュエリーは、装飾品を超えた魅力を持ち、100年以上の時を経た今もなお、輝きを放っています。中でも、ミキモト社製のティアラは、日本ならではの繊細な美意識と高度な技術を感じさせる、展示室を象徴する逸品です。
【美術館入館料】
現金のみ(1、2階共通)500円
※小学生以下無料/障害者割引あり
WEBサイト:小さな蔵の美術館
「小江戸甲府 花小路」や「甲州夢小路」では、山梨ならではのグルメも楽しめます。食事やカフェでひと息つきながら、お気に入りの品を探したりお土産を選んだりと、宝飾文化が息づく歴史ある街並みをゆっくり散策してみてください。
クリスタル・ミュージアム

写真出典:クリスタル・ミュージアム
レトロでモダンな雰囲気がある「クリスタル・ミュージアム」では、天然石アクセサリー、ガラス食器、雑貨、ガラスのミニチュアなどを販売しています。
アクセサリーショップ玉屋(入場無料)



写真出典:クリスタル・ミュージアム
天然石アクセサリーやガラス製品が並ぶ店内は、まるで宝箱のよう。女性用はもちろん、男性用やキッズ向けまで幅広く揃い、家族で楽しめます。迷ったときは無料の占いで、運命のパワーストーンと出会ってみてください。
さまざまなパーツを組み合わせて、オリジナルアクセサリーが作れる手作り体験コーナーもあり、気軽に楽しめます。
さらに、「宝石のまち 甲府」ならでは!事前予約不要で水晶ジオード割体験(1,980円/税込)も実施中!割ってみるまで中が分からない、お楽しみのワクワク体験ができちゃいます!


写真出典:クリスタル・ミュージアム
石とガラスの博物館

写真出典:クリスタル・ミュージアム
併設の「石とガラスの博物館」には、輝く宝石の原石や石を素材としたアート作品が展示されています。宇宙を思わせる神秘的なメノウのトンネルが迎える館内では、1階に輝く原石、2階に山梨の造形作家作品やスワロフスキー、ラリックのクリスタルガラスを展示。原石からアートへと広がる石の美しさを楽しめる、旅の思い出におすすめのスポットです。
【博物館入館料】
一般500円(高校生以上)
小人300円(小・中学生)
団体割引 (20名様以上)
※アクセサリーショップ玉屋への入場は無料です。
山梨ジュエリーミュージアム

「山梨ジュエリーミュージアム」では、地場産業として歩んできた宝飾品加工の歴史と、受け継がれてきた文化を大切に守りながら、そこに息づく卓越した技術と美しい宝飾品の展示を通して、山梨宝飾産業と「山梨ジュエリー」の魅力について学ぶことができます。
「山梨ジュエリーミュージアム」の主な見どころを以下にまとめました。
| 見どころ | 内容 |
|---|---|
| 歴史展示 | 江戸時代から現代までの山梨の宝飾産業の変遷を時系列で紹介します。 |
| 技術紹介 | 世界トップクラスの宝石研磨技術や貴金属加工の精巧な職人技を解説します。 |
| 作品展示 | 伝統的な甲州水晶貴石細工や、現代のデザイナーによる斬新なジュエリー作品を鑑賞できます。 |
| 体験コーナー | ジュエリー作りや研磨体験ができることもあり、実際に山梨の技術に触れることができます。 |
参考・出典:山梨ジュエリーミュージアム
山梨の宝石産業の現在と未来
長い年月をかけて受け継がれてきた伝統の技と、新しい発想を取り入れ続ける革新の精神が融合し、「山梨ジュエリー」は今もなお未来へ向かって進化を続けています。
未来へつなぐ輝きの秘密
山梨で生まれた宝石やジュエリーは、その美しさだけでなく、それを生み出す職人たちの確かな技術に支えられています。ここでは、世界に誇る山梨の研磨技術と、熟練の職人が手がける貴金属加工の技についてご紹介します。
世界トップクラスの宝石研磨技術
山梨の宝飾産業は、古くから水晶の産地として栄え、その過程で宝石を美しく磨き上げる「研磨技術」を培ってきました。特に、石の内部から光を引き出し、最大限に輝かせるためのカット技術は、世界トップクラスと評価されています。熟練の職人は、宝石の特性を見極め、ミクロン単位の精度で一つひとつ丁寧にカットし、研磨していきます。この繊細な手仕事が、宝石本来の美しさを最大限に引き出し、見る人を魅了する輝きを生み出している秘密と言えます。
山梨の研磨技術は、石を磨くだけではなく、ダイヤモンドやルビー、サファイアといった硬質な宝石から、オパールや翡翠のようなデリケートな宝石まで、それぞれの素材に合わせた最適なカットと研磨方法が用いられます。この高い技術力は、長年にわたる経験と探求心によって受け継がれ、常に進化を続けています。
熟練の職人が生み出す貴金属ジュエリー
山梨のジュエリーの魅力は、宝石の輝きだけではありません。宝石を彩り、身につける人の個性を引き出す貴金属加工の技術もまた、山梨が誇る伝統です。貴金属加工には、金属を彫り込む「彫金」、溶かした金属を型に流し込む「鋳造」、そして宝石を美しく留める「石留め」など、様々な技法があります。山梨の職人たちは、これらの伝統的な技法を継承しながらも、新しいデザインや素材を取り入れ、時代に合わせたジュエリーを生み出しています。
一つひとつのジュエリーは、デザイン画から始まり、ワックス原型制作、金属加工、研磨、石留めといった多くの工程を経て完成します。特に、繊細なデザインを表現する彫金や、宝石の美しさを際立たせる石留めには、長年の経験と卓越した技術が求められます。職人の手から生み出されるジュエリーは、身につける人の想いをカタチにする、特別な輝きを放ちます。
甲府宝飾産地としてのブランド力
山梨・甲府は、日本を代表する宝飾産業の集積地として発展し、長い歴史の中で培われた卓越した技術によって、国内はもちろん世界からも高い評価を受けてきました。現在も、日本で流通する多くのジュエリーが山梨で企画・加工されており、その確かな品質と信頼性は広く支持されています。熟練の職人が一つひとつ丁寧に仕上げる山梨のジュエリーは、芸術品として多くの人々に愛されています。
また、地域全体で「甲府」という産地ブランドの価値を高める取り組みも進められています。山梨県が推進する「Koo-fu(クーフー)」ブランドは、厳しい審査を通過した、技術力とデザイン性に優れたジュエリーに与えられる称号で、安心と信頼の証として国内外に山梨の魅力を発信しています。
さらに、毎年春には宝石・鉱物の祭典「甲府ジェムマーケット」が開催され、宝石や原石、アクセサリーが一堂に集います。展示・販売や体験企画を通じて、甲府の宝石文化や技術にふれることができ、初心者から愛好家まで幅広い層が楽しめるイベントになっています。そして、毎年11月には、ジュエリー産地、山梨・甲府の魅力を体感し、宝飾文化を発信するイベント「やまなし JEWELRY WEEK」が開催されます。ジュエリーデー(11月11日)前後に行われ、宝石や鉱物の展示・販売をはじめ、ジュエリー制作や研磨体験、工房巡り、ファッションショーなど多彩な企画が展開されます。トークショーやキッズ向け体験もあり、春の「甲府ジェムマーケット」とともに、「宝石のまち 甲府」の魅力を体感できるイベントとして親しまれています。
まとめ
山梨の宝石とジュエリーの歴史は、かつて水晶の産地として栄えたことから始まります。この地で育まれてきた研磨や貴金属加工の技術は、先人たちの情熱と努力によって磨き上げられ、今日の山梨ならではの宝飾文化を築いてきました。
山梨を訪れると、長い年月をかけて受け継がれてきた職人の技と、宝石に込められた物語を身近に感じることができます。一つひとつのジュエリーには、世界に誇る研磨技術と熟練の手仕事が息づいています。
伝統を大切にしながら進化を続ける山梨・甲府の宝飾産業。旅のひとときに、ぜひ、宝石とジュエリーが紡いできた歴史と輝きに触れてみてください。


